回路ショートの可能性が高くなるのが、ベタ銅はくとパターンとの間隙距離が近すぎることで銅はくの間にエッチング液が入りにくくなりパターン形成ができない場合です。
とくに銅はく面積が広い箇所はエッチング液が銅はくの間に入りにくいこともあり、正しいパターン形成ができなくなるケースがあります。
パターンデータに鋭角や微細な形状、微小な隙間(スライバ)ができると意図しないパターン形成となり、最悪のケースではショートや断線に繋がります。
スライバは、エッチング工程中にドライフィルムが剥離しやすく、その剥離したドライフィルムが工程の薬液に浮遊し他の基板に付着してしまうことがあります。
スリットを加工するために使うルータービット。現在では太いドリルビットを使用する必要性からスリット幅は2.0mmが標準となっていますが、いまでもφ1.0mmなどの細いルータービットを使うときがあり、細いとビット折れが発生しやすいため、不良の原因となります。折れないように工程速度を遅くするため製造時間も遅くなる傾向にあります。
ピッチなど領域が極めて細かく精密である高精細なフレキシブル基板。難しい領域だからこそ、プロフェッショナルに依頼することがトラブルを回避する鍵になります。
その点で今回取り上げたいのが、創業50年超でフレキシブル基板を設計・製造している「三陽」です。
ほかではあまり見られない20ミクロンピッチのフレキシブル基板など、難しい領域にも対応する三陽。実現できる秘訣を「FPC企業マップ」編集チームがインタビューで深掘りしてみました。
高精細のフレキシブル基板をつくれる秘訣を教えてください。
ひとつは、「設計力」だと思います。「設計者のスキルが高い」とも言えます。設計者はお客様の意図を正確に把握したうえで、逆に提案をさせていただくことも多いです。図面に記されたスペックを守りながらも、より良い形があればご提案さしあげています。
もうひとつは、技術力の高さです。これは「熱意」にも置き換えられるかもしれません。ピッチが狭くなると、設計図どおりに作るのが難しくなってきます。たとえば20ミクロンピッチにマスキングして銅をとかしても、溶けきれなかったり、溶けすぎたりしてうまくいかないことも多いです。基板の全体の模様によっても、全然異なりますからね。
弊社では基板全体を見ながら計算をして設計値を変えたり、完成図のとおりのフレキシブル基板の生成が難しそうであればお客様に説明し、図面を少し変えてもらったりもしています。
これまでの経験を踏まえて、ご提案されるということでしょうか?
そうですね。ピッチが細くなったり太くなったりというのは、今までの経験値である程度わかってきています。細くなってしまうならあらかじめ太くしておくなど銅をとかしたときにどうなるかを計算し、溶かしたときにちょうど良くなるように補正をかけています。
これは何十年もかけて積み上げてきた経験がなせる業ですね。まずは弊社でできる範囲のもので考え、実現性が薄いものであれば提案をしていきます。
たとえば図面のここは変えられないと言われたら、どのように対応するのでしょうか?
お客様のなかにやはり譲れない部分がありますよね。そういった場合は協議をしながら、最終的にベストなポイントを見つけてから着手することもあります。
図面を見ただけでは、お客さんの絶対譲れないポイントはわかりません。でもそのポイントを守らないと、出来上がった基板は価値のないものになってしまいます。自分たちができる仕様に合わせてもらうのでなく、お客様の想いをくみ取り、それは絶対に守るようにしています。
そもそも図面に矛盾が生じていたり、お客様の設計ミスや考え違いがあることも何割かあるので、そういったところも弊社ではチェックし、問題が起きないよう未然に防いでいます。
作業はチームで対応するのでしょうか?
設計だけでは手に負えない場合があるので、そのときは2~3人のチームで対応しています。設計、技術、製造、営業を含め4、5人くらい。それぞれの知恵を結集して仕上げています。
管理体制はどのような形になるのでしょうか?
基本はISOに則って、各工程内の作業者による検査と品質管理側の検査を関所ごとに行っています。回数はさまざまですが、一般的には5か所から6か所ほど検査のポイントを設けています。
検査の方法は目的や精度に合わせて変えていますし、遅くとも1日1回の集計を出し、各責任者に進捗状況や不良品の情報などを伝達し、品質や作業効率の改善を促しています。
依頼がきてから、どれくらいの期間で対応可能でしょうか?
スタンダードな期間というものはありません。一番簡単な仕様であれば1週間くらいですし、複雑な仕様だと2ヶ月近くかかります。まずはご相談していただければ、最適な形を検討し、ご提案を差し上げます。
本日はありがとうございました!
三陽の大きな魅力は、「お客様目線」であることだと感じます。自分たちがつくりやすいフレキシブル基板にするのではなく、要望や譲れないポイントをヒアリングしたうえで、ベストに近づけていく。それが実現できているのは、設計者の技術力の高さと情熱があるからこそと言えるでしょう。そんなスタッフたちばかりの三陽に依頼をすればきっと、理想的なフレキシブル基板が出来上がるのではないでしょうか。
設計から実装まで一貫で対応できるのが三陽の強み。お客様と相談しながら進めるため、「できない」と断るケースが少ないです。
狭いピッチの高精細FPCにも対応しているため、他社では断られたような難しい加工にも対応可能。その他、試作や短納期も任せることができる、幅広い対応力を持つメーカーです。
フレキシブル基板において40年の経験を積んできた実績を持つ三陽。その技術力の高さから、高精細フレキシブル基板もまるっとお任せできます。
サブトラクティブ法、セミアディティブ法無電解金属析出などに対応できるため、超高精細基板をカスタムメイドできます。
三陽は「UL認証規格」や「ISO 9001」「ISO14001」などを取得し、国際的な品質規格をクリア。
社内的にも、熟練の技術スタッフによる品質チェックや、製品の安定化を継続するための人材育成を行うなど、「100%良品」に向けたゆまぬ努力を続けています。