FPC基板とは、薄くて柔らかい絶縁フィルムの上に、銅の回路を形成したプリント基板です。 「フレキシブルプリント配線板」「フレキシブル基板」「フレキ基板」と呼ばれることもあります。
一般的な硬い基板と違い、FPC基板は曲げて使えることが大きな特徴です。 狭いすき間に配線したいとき、機器の形に合わせて配線を折り曲げたいとき、可動部に配線したいときに使われます。
ただし、FPC基板は「曲がる基板」というだけではありません。 材料の選び方、銅箔の種類、曲げる位置、補強板の入れ方、部品実装の有無によって、使いやすさや耐久性が変わります。
FPC基板は、電子機器の中で部品と部品をつなぐために使われる基板です。 硬い基板のように部品を載せるだけでなく、ケーブルのように配線を引き回す役割も持っています。
たとえば、スマートフォンの中では、カメラ、ディスプレイ、バッテリー、センサーなど多くの部品が限られたスペースに収められています。 そのような場所では、硬い基板だけで配線しようとすると、スペースが足りなかったり、部品配置の自由度が下がったりします。
FPC基板を使うと、薄いフィルム状の基板を曲げながら配置できます。 そのため、立体的な配線や折り曲げ配線がしやすくなり、機器の小型化・薄型化につながります。
つまりFPC基板は、単に「柔らかい基板」ではなく、製品内部の限られたスペースを有効に使うための配線部品でもあります。
これらは、ほぼ同じ意味で使われることが多い言葉です。
厳密な資料では「フレキシブルプリント配線板」と書かれることがありますが、検索や実務では「FPC基板」「フレキシブル基板」「フレキ基板」もよく使われます。
FPC基板が選ばれる理由は、曲げられることだけではありません。 薄さ、軽さ、配線の自由度、部品点数の削減など、複数のメリットがあります。
とくに重要なのは、製品内部の「狭さ」に対応しやすいことです。 電子機器は小型化・薄型化が進んでおり、内部に使えるスペースは限られています。 FPC基板は薄く、折り曲げて配置できるため、硬い基板やケーブルだけでは難しい配線にも対応しやすくなります。
一方で、FPC基板は自由に何度でも曲げられるわけではありません。 曲げる位置、曲げ半径、曲げる回数、回路の形状によっては、断線や劣化のリスクがあります。
そのため、FPC基板を使うときは「曲げられるか」だけでなく、「どのように曲げるか」まで考える必要があります。
FPC基板を理解するには、リジッド基板との違いを知るのが近道です。 リジッド基板とは、一般的な硬いプリント基板のことです。
リジッド基板は、部品を載せて回路を作る土台として使われます。 しっかりした板状なので、部品を安定して実装しやすい一方、曲げて使うことは基本的にできません。
FPC基板は、部品を載せるだけでなく、配線材としての役割も持ちます。 薄く柔らかいため、狭い場所を通したり、折り曲げたり、部品間を立体的につないだりできます。
| 比較項目 | FPC基板 | リジッド基板 |
|---|---|---|
| 形状 | 薄く柔らかい | 硬い板状 |
| 曲げやすさ | 曲げて配置できる | 基本的に曲げられない |
| 主な役割 | 配線、接続、部品実装 | 部品実装、回路形成 |
| 向いている用途 | 省スペース配線、可動部、三次元配線 | 固定された電子回路、制御基板 |
| 注意点 | 曲げ部や実装部の設計に注意が必要 | 曲げ用途や狭いすき間の配線には向きにくい |
どちらが優れているというより、役割が違います。 部品を安定して実装したい部分にはリジッド基板、曲げたり引き回したりしたい部分にはFPC基板、というように使い分けられます。
FPC基板は、薄い材料を重ねて作られています。 基本的には、土台になるベースフィルム、電気を流す銅箔、回路を保護するカバーレイなどで構成されます。
この構造を知っておくと、FPC基板に関する用語が理解しやすくなります。 「2層材」「3層材」「圧延銅箔」「電解銅箔」「カバーレイ」といった言葉は、FPC基板の材料や層の違いを説明するためのものです。
ベースフィルムは、FPC基板の土台になる薄い絶縁フィルムです。 電気を通さず、銅の回路を支える役割を持ちます。
よく使われる材料には、ポリイミド、液晶ポリマー、PETなどがあります。 材料によって、耐熱性、曲げやすさ、寸法の安定性、コストが変わります。
銅箔は、電気を流す回路になる部分です。 FPC基板では、薄くて柔らかい銅箔が使われます。
銅箔には、圧延銅箔、電解銅箔、めっき銅箔などがあります。 曲げて使う用途では、銅箔の種類や厚みが耐久性に関わります。
とくに可動部で使うFPC基板では、回路が繰り返し曲げられるため、銅箔の選定が重要になります。 単に電気が流れればよいのではなく、曲げたときに亀裂や断線が起きにくい構成にする必要があります。
カバーレイは、FPC基板の回路を保護するためのフィルムやインクです。 回路の上を覆うことで、絶縁性を保ち、傷や汚れから回路を守ります。
リジッド基板では、表面保護にソルダーレジストが使われることが多いです。 一方、FPC基板では、曲げに対応しやすいカバーレイが使われることがあります。
カバーレイは、ただ回路を覆えばよいわけではありません。 部品を実装する部分や、コネクタと接続する端子部分は、銅を露出させる必要があります。 そのため、どこを保護し、どこを開口するかの設計が重要になります。
FPC基板では、ベースフィルムと銅箔の構成によって「2層材」「3層材」と呼ばれることがあります。
ベースフィルムと銅箔を接着剤で貼り合わせるものがFPC3層材です。 一方、接着剤を使わずにベースフィルムと銅箔を一体化させるものがFPC2層材です。
一般的に、接着剤層がない2層材は薄くしやすく、屈曲性や寸法安定性の面で有利になる場合があります。 ただし、用途やコストによって適した材料は変わります。
たとえば、一般的なFPCであれば3層材が選ばれることもあります。 一方で、細かい配線や厳しい寸法精度が求められる場合は、2層材が検討されることがあります。
FPC基板には、回路の層数や使い方によっていくつかの種類があります。 「薄く曲げたいのか」「配線を多くしたいのか」「部品を載せたいのか」によって、適した種類は変わります。
片面FPCは、片側だけに回路を持つFPC基板です。 構造がシンプルで、FPCらしい薄さや柔らかさを活かしやすいタイプです。
折り曲げて使う部分や、可動部の配線では、片面FPCが選ばれることがあります。 ただし、回路が複雑になると、片面だけでは配線しきれない場合があります。
両面FPCは、両側に回路を持つFPC基板です。 片面FPCよりも配線密度を高めやすく、回路設計の自由度が上がります。
ただし、構造が厚くなりやすく、片面FPCに比べると曲げやすさは落ちることがあります。 可動部に使う場合は、曲げる位置や回数を考えた設計が必要です。
多層FPCは、複数の回路層を重ねたFPC基板です。 高密度な配線が必要な場合や、複雑な回路を限られたスペースに収めたい場合に使われます。
高機能な製品に向いていますが、層数が増えるほど構造は複雑になります。 コストや製造難易度も上がりやすいため、量産性や必要性能とのバランスを考える必要があります。
リジッドフレキシブル基板は、硬いリジッド基板部分と、柔らかいFPC部分を一体化した基板です。
部品を載せる部分は硬くし、曲げて接続する部分は柔らかくする、といった設計ができます。 コネクタやケーブルを減らせる場合があり、小型化や組み立て性の向上に役立ちます。
ただし、通常のFPC基板よりも設計や製造が複雑になりやすいため、早い段階でメーカーに相談することが重要です。
FPC基板の性能は、材料によって大きく変わります。 「曲げられるか」「熱に耐えられるか」「寸法が安定するか」「高周波に対応できるか」は、材料選びに関係します。
ポリイミドは、FPC基板でよく使われる代表的な材料です。 耐熱性や電気絶縁性に優れており、一般的なFPCのベースフィルムとして広く使われます。
部品実装では、はんだ付けなどで熱がかかることがあります。 そのため、熱に強いポリイミドはFPC基板の材料として使いやすい素材です。
液晶ポリマーは、LCPとも呼ばれます。 高周波特性を重視する用途で検討される材料です。
たとえば、高速通信や高周波信号を扱う機器では、材料の電気特性が重要になります。 そのような用途では、一般的なポリイミドではなく、液晶ポリマーが選ばれることがあります。
PETは、比較的コストを抑えやすい材料として使われることがあります。
ただし、耐熱性はポリイミドより低いため、高温工程やはんだ実装が必要な用途には向かない場合があります。 コストを優先するのか、耐熱性や耐久性を優先するのかによって、材料の選び方は変わります。
基板の材料となる
ポリイミド、
液晶ポリマーなどについて
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FPC基板は、材料を用意して、銅箔に回路を作り、表面を保護し、必要に応じてめっきや外形加工を行って作られます。
製造工程を細かく見ると専門的ですが、まずは「回路を作る工程」と「回路を守る工程」に分けて考えると理解しやすくなります。
FPC基板では、銅箔を加工して回路パターンを作ります。 代表的な方法には、サブトラクティブ法とアディティブ法があります。
サブトラクティブ法は、不要な銅箔を取り除いて、必要な回路だけを残す方法です。 一方、アディティブ法は、必要な部分に銅を付けて回路を形成する方法です。
どちらの方法が適しているかは、配線の細かさ、必要な精度、コスト、量産性によって変わります。
エッチングとは、薬品などを使って不要な部分を取り除き、目的の形に加工する方法です。 FPC基板では、不要な銅箔を取り除いて回路を作る工程で使われます。
エッチングの精度が低いと、配線の幅がばらついたり、細い回路がうまく形成できなかったりします。 そのため、細かい回路を作るFPC基板では重要な工程です。
めっきは、金属の膜を付ける加工です。 FPC基板では、スルーホールを導通させるため、端子部を保護するため、表面処理を行うためなどに使われます。
めっき方法には、電気を使う電解めっきと、化学反応を利用する無電解めっきがあります。 目的や使う金属によって、適した方法は変わります。
回路を作ったあとは、カバーレイなどで回路を保護します。 ただし、部品を実装する部分やコネクタに接続する部分は、必要に応じて銅を露出させます。
その後、FPC基板を製品に組み込める形に加工します。 FPCは薄く柔らかいため、外形の角やスリット部分に応力が集中しないようにすることも大切です。
FPC基板は、自由に曲げられる便利な基板です。 しかし、設計を誤ると、断線、亀裂、部品の剥がれ、接触不良などが起きることがあります。
とくに注意したいのは、曲げ部、実装部、端子部です。 この3つはFPC基板の不具合が起きやすい場所です。
曲げる部分の配線に角があると、そこに力が集中しやすくなります。 力が集中すると、銅箔に亀裂が入ったり、断線したりする原因になります。
そのため、曲げ部のパターンはできるだけなだらかにします。 角を丸める、急な幅変更を避ける、ランドとの接続部を鋭角にしない、といった工夫が必要です。
部品を実装した部分を曲げると、はんだ接合部に力がかかります。 その結果、部品が浮いたり、はんだに亀裂が入ったりすることがあります。
部品は、できるだけ曲げない平らな部分に配置します。 曲げ部と実装部は分けて考えるのが基本です。
FPC基板は柔らかいため、そのままでは部品実装やコネクタ接続が安定しにくい場合があります。
そのような部分には、補強板を貼り付けます。 補強板を使うことで、実装部の反りを抑えたり、コネクタに差し込む端子部の強度を高めたりできます。
ただし、補強板を貼る位置も重要です。 補強板の端に力が集中すると、そこから折れやすくなることがあります。 補強する範囲、厚み、材料は、使用する部品やコネクタに合わせて決める必要があります。
FPC基板にも電子部品を実装できます。 ただし、薄く柔らかいため、リジッド基板と同じように扱えるとは限りません。
一般的な基板実装方法には、基板表面の銅露出部にチップ部品をはんだ付けする「表面実装」と、スルーホールに部品のリードを挿入してはんだ付けする「リード挿入実装」があります。
FPC基板で表面実装を行う場合、基板の反りや変形を抑えるために補強板を使うことがあります。 実装部が安定していないと、部品の位置ずれやはんだ不良につながるためです。
ピッチとは、部品の端子同士の間隔や、配線同士の間隔を指す言葉です。 FPC基板では、小型機器に使われることが多いため、細かいピッチの設計が必要になる場合があります。
ただし、ピッチを細かくするほど、製造難易度は上がります。 量産性やコストにも関わるため、必要以上に細かくしすぎないことも大切です。
FPC基板は、薄く、軽く、曲げられるという特徴を活かして、さまざまな製品に使われています。
共通しているのは、「限られたスペースに配線したい」「部品同士を立体的につなぎたい」「可動部に配線したい」というニーズです。
スマートフォンやタブレットでは、カメラ、ディスプレイ、センサー、バッテリーなど、多くの部品が狭い内部空間に配置されています。 FPC基板は、こうした部品同士をつなぐ配線として使われます。
カメラやディスプレイまわりでは、薄く曲げられる配線が必要になることがあります。 FPC基板を使うことで、本体基板と表示部、撮像部、操作部などを効率よくつなげます。
自動車では、センサー、カメラ、表示装置、操作パネルなど、多くの電子部品が使われています。 配線スペースを抑えたい場所や、軽量化したい場所でFPC基板が使われることがあります。
医療機器や産業機器では、小型化だけでなく、信頼性も重要です。 センサー、表示部、可動部、操作部などの配線にFPC基板が使われることがあります。
FPC基板を依頼する際は、「FPCを作りたい」と伝えるだけでは仕様が決まりません。 どこで使うのか、どのくらい曲げるのか、部品を載せるのか、どの性能を優先するのかを整理しておく必要があります。
とくに、初めてFPC基板を検討する場合は、以下の項目を確認しておくと相談がスムーズです。
FPC基板は、用途に合った設計をすれば、省スペース化や軽量化に大きく役立ちます。 しかし、曲げ部や実装部の条件を十分に考えずに進めると、不具合の原因になることがあります。
まずは使い方を整理し、必要な材料・構造・実装条件を確認することが大切です。
FPC基板は、薄く柔らかい絶縁フィルム上に銅の回路を形成した、曲げられるプリント基板です。 狭い場所への配線、立体的な配線、可動部の配線に向いており、電子機器の小型化・軽量化に役立ちます。
一方で、FPC基板は設計の自由度が高いぶん、注意すべき点もあります。 曲げ部の配線形状、部品実装部の補強、端子部の強度、材料選定などによって、耐久性や使いやすさが変わります。
FPC基板を検討する際は、まず「どこに使うのか」「曲げるのか」「部品を載せるのか」「何を優先するのか」を整理しましょう。 そのうえで、材料、構造、製造方法、実装条件を決めていくと、用途に合ったFPC基板を検討しやすくなります。
フレキシブル基板の依頼先を探す動機は企業ごとに異なります。ここでは、代表的な3つのニーズに合わせて、それぞれ得意領域を持つFPC製造メーカー3社をご紹介します。